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2022-7-22
2022年 夏学期 第9回 物性セミナー
講師 神野 莉衣奈 氏(東大総合文化)
題目 準安定相酸化ガリウムの構造制御
日時 2022年 7月 22日(金) 午後4時50分
場所 Zoom によるオンライン開催
・物性セミナーMLに登録されている方は、セミナー案内メールでZoomアドレスを通知します。
・登録のない方は、以下で予め登録をお願いします。(自動的に物性セミナーMLへ登録されます。)登録フォーム https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdT67ZsTDiKsvutP59tY4tOUlx4WTInMKkTQIGWLqYCrPAQKA/viewformをご利用ください。
アブストラクト
酸化ガリウム (Ga2O3) は約5 eVのバンドギャップエネルギーを持つ超ワイドバンドギャップ半導体材料の一つであり、大きな絶縁破壊電界強度が予想されるため次世代パワーデバイスの材料として期待されている。Ga2O3は5つの異なる結晶多形 (α, β, γ, δ, ε) を持つ。大気圧下での熱的に最安定相はβ相 (単斜晶β-gallia構造) であるが、混晶化が容易、自発分極など最安定相にはない特徴から準安定相にも近年注目が集まっている。酸化ガリウム以外においても、新規材料探索の観点から準安定構造の活用は今後重要である。 準安定相の応用には、結晶構造の制御および構造の速度論的安定化が必須であり、本セミナーでは酸化ガリウムの構造制御について紹介する。準安定構造は気相成長など非平衡反応を用いることで類似する構造の多種基板上に作製可能であるが、Ga2O3は5つ結晶多形を持つため単結晶の制御が課題であった。本系では温度や圧力に加え、成長基板の面方位や終端構造など表面構造に結晶構造が起因していることを発見し、表面構造の制御により結晶相を作り分けることに成功した。このように非平衡反応により得られた準安定相は、熱平衡論的には最終的に最安定相のβ相に構造相転移するが、最安定相の核生成・核成長を抑制することで速度論的に構造を安定化できる。α相において基板からの影響および応力を制御することで、速度論的安定性を飛躍的に向上することに成功した。
宣伝用ビラ
KMB20220722.pdf(86)
物性セミナーのページ
http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/KMBseminar/wiki.cgi/BusseiSeminar
2022-7-15
2022年 夏学期 第8回 物性セミナー
講師 白石 直人 氏 (東大院総合文化)
題目 孤立量子系の熱平衡化の決定不能性
日時 2022年 7月 15日(金) 午後4時50分
場所 Zoom によるオンライン開催
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アブストラクト
外部から孤立した量子多体系において、初期状態を非平衡状態にとってユニタリ時間発展させると、系は唯一の熱平衡状態に緩和する。これは「熱平衡化(熱化とも)」と呼ばれている現象で、ほとんどすべての自然なマクロ系において観察できるものである。その一方で、可積分系などの熱平衡化しない系の存在も知られている。「何が熱平衡化の有無を決めるのか」という問題は、孤立量子系の熱平衡化の研究における中心的な問題である。
これに対し我々は、理論計算機科学の手法を援用することで、孤立量子系の熱平衡化の有無の判定は一般に決定不能であることを証明することに成功した[1]。すなわち、与えられた系が熱平衡化するかしないかを判定する一般的な手続きは原理的に存在しえないということである。特に、ハミルトニアンは1次元並進対称で近接相互作用、観測物理量は1体物理量の並進和、初期状態は1サイトの直積状態という極めて単純な問題設定に限定してもなお熱平衡化の有無は決定不能である。今回の結果は、単に熱平衡化が決定不能であることを示すのみならず、熱平衡化現象は任意の計算課題を計算する能力を持つ(チューリング完全)ことを示しており、熱平衡化現象の予想以上の複雑さを示唆するものである。
[1] Naoto Shiraishi and Keiji Matsumoto, "Undecidability in quantum thermalization", Nat. Comm. 12, 5084 (2021)
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KMB20220715.pdf(66)
物性セミナーのページ
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2022-7-11
2022年 夏学期 第3回 物性セミナー (注 日程を再々調整しました)
講師 伏屋 雄紀 氏(電気通信大 基盤理工)
題目 磁場中固体電子の量子論
日時 2022年 7月 11日 【月】 午後3時10分 ・・・いつもと違う曜日と開始時間に注意
場所 16号館 827 室(対面)及びZoom (オンライン)
Zoom参加の方へ:
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アブストラクト
磁場は物理学のみならず,自然科学において極めて基本的で重要な存在である.しかし身近な存在であるはずの磁場は,量子の世界では未だ解明されない多くの謎を生み出す源泉でもある.金属や半導体中の電子は,磁場によってエネルギーが量子化(ランダウ量子化)される.そのこと自体は古くから知られていたが,量子化の間隔や規則性は物質によって様々に異なり,それを正確に"量子力学の枠組みで"計算することは現代においても困難であった[1]. 近年,固体における相対論効果(スピン軌道結合)が,トポロジカル量子現象との関連性も含め,大いに注目を集めている.研究が進むにつれ,スピン軌道結合とランダウ量子化との関係性が従来理論では全く理解できない,という問題が顕在化してきた.この問題を解決するために,磁場中固体電子の量子化エネルギーを正確に計算する理論が求められていた [2]. 我々は,一見何の関係もないハイゼンベルクの「行列力学」が,ランダウ量子化の計算に転用できることを発見し,それを基に量子化エネルギーを厳密に計算出来る理論手法(π-matrix法)を開発することに成功した [3].この手法をディラック電子系の典型として知られるPbTeに適用し,これまでの常識的理解を覆す,スピン軌道結合とランダウ量子化の新しい関係性を見出した.この手法は密度汎関数法やLCAO法などバンド計算と組み合わせることが可能で,様々な物質に固有のランダウ量子化を計算できる.実験に先駆けて強磁場領域を理論的に探索することにより,磁場中固体電子の新しい量子現象を見出す一助になると期待している [4]. 本セミナーでは,集中講義の延長として,磁場中固体電子の量子論の基本的な内容から最近の研究までを紹介したい.
参考文献
[1] D. Shoenberg, in Magnetic Oscillation in Metals (Cambridge University Press, 1984).
[2] YF, Z. Zhu, B. Fauque, W. Kang, B. Lenoir, and K. Behnia, "Origin of the large anisotropic g-factor of holes in bismuth", Phys. Rev. Lett. 115, 216401 (2015)
[3] Y. Izaki and YF, "Nonperturbative matrix mechanics approach to spin-split Landau levels and the g-factor in spin-orbit coupled solids", Phys. Rev. Lett. 123, 156403 (2019)
[4] W. Kang, F. Spathelf, B. Fauque, YF, K. Behnia, Nat. Commun. 13, 189 (2022)
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KMB20220711.pdf(31)
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2022-7-8
2022年 夏学期 第7回 物性セミナー
講師 長田 有登 氏(東大総合文化)
題目 光共振器による素励起の制御
日時 2022年 7月 8日(金) 午後4時50分
場所 Zoomによるオンライン開催
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アブストラクト
レーザー光は原子・分子・固体の分光を著しく発展させ、基礎物理学の深化と応用物理学の発展に現在も大きく寄与している。特に精密分光の技術が洗練されるにつれて原子の運動状態のレーザーによる冷却や原子が内包する電子ひとつひとうのスピン状態をレーザー光によって高精度に制御することも可能になった。これは原子の量子状態を光子の量子状態に変換することが可能であることをも意味するが、通常は単一原子と単一光子の相互作用は弱く、変換の効率が低い。この変換効率を改善するためのカギとなるのが光共振器による光ー物質相互作用の増強であり、共振器はこんにちの量子技術において欠かせない強力なツールである。
本講演ではレーザー及び光共振器を用いた物質の制御について、私がこれまでに研究対象としてきた原子、励起子、スピン波などを例に解説する。また、時間が許せば光共振器による物質の光制御の一つの応用として固体フォノンの光制御の可能性についても議論したい。
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KMB20220708.pdf(68)
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2022-7-1
2022年 夏学期 第6回 物性セミナー
講師 中野 裕義 氏(慶應義塾大学理工学部物理情報工学科)
題目 一様せん断流下における連続対称性の破れと長距離秩序
日時 2022年 7月 1日(金) 午後4時50分
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アブストラクト
マーミン・ワグナーの定理は「熱平衡状態にある二次元短距離相互作用系では、有限温度で連続対称性が自発的に破れることが禁止されており、長距離秩序を持つ相が存在しない」ということを主張する良く知られた定理である。この定理はハイゼンベルグスピン系や固体結晶のような幅広い平衡系に対して適用できることが知られている。
一方で、アクティブマターの”群れ”現象を記述するVicsekモデルがマーミン・ワグナーの定理の適用範囲外にあることは90年代から知られており、最近、詳細釣り合い条件の破れ、すなわち系が熱平衡状態にないことがマーミン・ワグナーの定理を破る重要な要素であることが指摘された[1]。しかしながら、マーミン・ワグナーの定理が適用できない非平衡系はVicsek model以外にほとんど知られていない。非平衡系にマーミン・ワグナーの定理のような強力な禁止則が存在するか否かという興味深い問いはその解決の足掛かりさえないのが実状である。
このような状況の中で、発表者は最近、一様せん断流下での二次元O(2)モデルがマーミン・ワグナーの定理の範疇になく、自発的に長距離秩序が発生することを理論的・数値的に示した[2,3]。本講演では、この数値解析の手法や結果を詳しく紹介し、我々が明らかとした長距離秩序の安定化メカニズムについて説明を行う。
[1] H. Tasaki, Phys. Rev. Lett. 125, 220601 (2020)
[2] H. Nakano, Y. Minami, and S.-i. Sasa, Phys. Rev. Lett. 126, 160604 (2021)
[3] Y. Minami, H. Nakano, and Y. Hidaka, Phys. Rev. Lett. 126, 141601 (2021)
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KMB20220701.pdf(277)
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