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2018-7-24
2018年 夏学期 第7回 物性セミナー
講師 新見 康洋 氏(大阪大学大学院理学研究科, 大阪大学スピントロニクス学術連携研究教育センター)
題目 スピン流で観る物理
日時 2018年 7月 24日(火) 午後4時50分
場所 16号館 827
アブストラクト
物質の電気的特性、つまり金属か半導体、もしくは絶縁体かは、電子の持つ電荷の流れ「電流」によって決まる。物質の磁気的特性、つまりその物質が磁石になり得るかどうかは、電子の持つもう1つの自由度「スピン角運動量」によって決まる。電子の持つ2つの自由度、電荷とスピンはそれぞれ、エレクトロニクス素子と磁気記録素子として利用され、個別に発展してきた。1990年代に入ると、これら2つの自由度を組み合わせたスピントロニクスという新しい分野が登場し、現在この技術は、ハードディスクドライブの読み取りヘッドなどに応用され、我々の生活に欠かすことのできないものになっている。さらに2000年代に入ると、単に電荷とスピンの自由度を組み合わせるだけでなく、スピンだけの流れ「スピン流」を取り出すことができるようになってきた。スピン流を用いれば、電荷の流れが伴わないため、次世代の低消費電力素子への応用が期待され、現在活発に研究が行われている。
一方、基礎学問に目を向けると、単にスピン流を生成したり、検出したりするだけに留まらず、スピン流を用いることで、物質のスピンに関連した情報を取り出せる「プローブ」としての役割を担わせることができる。そこで本講演では、まずスピン流の基本的な考え方、生成及び検出方法を紹介した後に、実際に「スピン流で観る」とどんな物理現象が明らかにできるのか、我々が取り組んでいる最新の研究を分かりやすく説明したい。
宣伝用ビラ
KMB20180724.pdf(199)
物性セミナーのページ
http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/KMBseminar/wiki.cgi/BusseiSeminar
2018-7-5
2018年 夏学期 第6回 物性セミナー
講師 齊藤 志郎 氏(日本電信電話株式会社 NTT物性科学基礎研究所 量子電子物性研究部 超伝導量子回路研究グループ)
題目 超伝導量子回路を用いた量子情報処理・量子センシング
日時 2018年 7月 5日(木) 午後4時50分
場所 16号館 827
アブストラクト
量子力学の世界では、重ね合わせ状態、もつれ状態といった古典力学では現れない不思議な状態が存在する。この量子性を積極的に活用した量子情報処理技術が注目を集めている。特に、超伝導回路から構成される超伝導量子ビットは、その操作性・拡張性への期待から飛躍的に発展してきた。近年、量子状態制御技術が向上し、量子計算機のみならず、量子シミュレーション、量子センシングといった新しい応用先に向けた研究も進んでいる。
本セミナーでは、超伝導量子回路を用いた量子情報処理技術の現状を概観したのち、超伝導量子ビットの例として、磁束量子ビットを詳しく紹介する。磁束量子ビットは、量子計算の基本素子としてだけではなく、巨視的量子性を実証するための素子としても注目を集めた。まずは、磁束量子ビットを用いて巨視的実在性の破れを検証した実験結果を紹介する[1]。続いて、電子スピン集団を超伝導量子ビット用の量子メモリとして利用するハイブリッド技術[2]と、逆に超伝導量子回路を用いて電子スピンを検出する量子センシングに関する研究[3]を紹介する予定である。
[1] G. C. Knee, et al., Nature Commun. 7, 13253 (2016).
[2] X. Zhu, et al., Nature 478, 221 (2011), S. Saito, et al., Phys. Rev. Lett. 111, 107008 (2013).
[3] H. Toida, et al., Appl. Phy. Lett. 108, 052601 (2016), R. Budoyo, et al., Phys. Rev. Mater. 2, 011403(R) (2018).
宣伝用ビラ
KMB20180705.pdf(212)
物性セミナーのページ
http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/KMBseminar/wiki.cgi/BusseiSeminar