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物性セミナー/2022-6

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2022-6-24

2022年 夏学期 第5回 物性セミナー

講師 花井 亮 氏(Asia Pacific Center for Theoretical Physics、 POSTECH)

題目  非相反相転移の物理

日時 2022年 6月 24日(金) 午後4時50分

場所 Zoom によるオンライン開催

・物性セミナーMLに登録されている方は、セミナー案内メールでZoomアドレスを通知します。

・登録のない方は、以下で予め登録をお願いします。(自動的に物性セミナーMLへ登録されます。)登録フォーム https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdT67ZsTDiKsvutP59tY4tOUlx4WTInMKkTQIGWLqYCrPAQKA/viewformをご利用ください。

アブストラクト

非平衡多体系では、ときに熱平衡系では生じ得ない状態が現れうる。熱平衡状態では起こり得ないことが証明されている時間結晶相の実現や、空間2次元系でありながら長距離秩序を示すフロッキング相の出現はその一例である。そのため近年、非平衡状態を用いた新たな物性探索の可能性が電子系・冷却原子気体・超伝導回路等の量子多体系からアクティブマター・化学反応ネットワーク・生命科学等に至る幅広い分野において盛んに研究され、大きな進展を見せている。

熱平衡状態における相転移の理解には、ランダウ理論が大きな成功を収めてきた。この理論は、自由エネルギー最小の状態が実現するという熱平衡状態の原則に基づき、各相での自由エネルギーを計算、比較することで相転移を記述するというものである。このような「エネルギー関数最小化の原理」は、実は非平衡相転移に関しても”ある程度”有用である。実際、光学双安定性、フロッキング相転移、及び、異方的パーコレーション転移などの多くの非平衡相転移において、現象論的なランダウの自由エネルギーを導入することでその相転移の存在を導くことが可能である。この場合、非平衡性は揺動散逸定理を破るノイズによりもたらされる空間・時間揺らぎを通してのみ現れる。 

本発表では、ギンツブルク・ランダウ理論を一般の非平衡系に適用できる形に拡張することにより、上記の「エネルギー最小化の原理」に則らない新しいクラスの非平衡相転移現象が現れることを示す。これは、集団モード間の非相反な結合により、有限ギャップモードがゴールドストーンモードと「合体」、集団励起スペクトルに例外点と呼ばれる特異点の出現により特徴づけられる。例外点の出現は一方のモードが他方のモードと一方的に結合することを示唆しているため、詳細釣り合い条件を必ず破っている必要性があり、これは熱平衡状態の対応物のない相転移点であると言える。この「臨界例外点」近傍では、空間4次元以下で発散する異常に巨大な揺らぎが生じ上部臨界空間次元が8へと跳ね上がるという、非常に特異な臨界現象を示す。その他ヒステリシスや時間(準)結晶が現れるなど、現れる物性は多岐に及ぶ。

本発表では、量子開放系やアクティブマター系などの例を交えながらこれらの物理を紹介する予定である。

宣伝用ビラ

KMB20220624.pdf(70)

物性セミナーのページ

http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/KMBseminar/wiki.cgi/BusseiSeminar

2022-6-10

2022年 夏学期 第4回 物性セミナー

講師 岡本 佳比古 氏(東大物性研究所)

題目 幾何学的フラストレート系の物質開拓

日時 2022年 6月 10日(金) 午後4時50分

場所 Zoom によるオンライン開催

・物性セミナーMLに登録されている方は、セミナー案内メールでZoomアドレスを通知します。

・登録のない方は、以下で予め登録をお願いします。(自動的に物性セミナーMLへ登録されます。)登録フォーム https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdT67ZsTDiKsvutP59tY4tOUlx4WTInMKkTQIGWLqYCrPAQKA/viewformをご利用ください。

アブストラクト

三角格子、カゴメ格子やパイロクロア格子といった、正三角形を基本ユニットとする幾何学的フラストレート格子に遷移金属原子が並んだ物質では、通常の磁性体や強相関電子系物質に現れるような、単純な磁気秩序や電荷秩序の形成が著しく抑制される。代わりに、スピン・軌道・電荷といったd電子の内部自由度がこれまでにない秩序構造をもつ、新奇な電子相や電子現象が現れる可能性があり、新規物質の開拓が新奇物性の発見に繋がり易い舞台といえるかもしれない。講演者はこのようなシナリオを信じ、様々な幾何学的フラストレート物質を発掘してきた。談話会では、パイロクロアCsW2O6における正三角形分子形成[1]と、三角格子磁性体AgCrS2における磁場誘起歪[2]を中心に、講演者が取り組んできたフラストレート物質開拓のうち最近の成果を紹介する。

[1] Y. Okamoto et al., Nat. Commun. 11, 3144 (2020).

[2] T. Kanematsu et al., Appl. Phys. Lett. 118, 142404 (2021).

宣伝用ビラ

KMB20220610.pdf(66)

物性セミナーのページ

http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/KMBseminar/wiki.cgi/BusseiSeminar

2022-6-3

2022年 夏学期 第3回 物性セミナー (注 日程を再々調整しました)

講師 伏屋 雄紀 氏(電気通信大 基盤理工) 

題目 磁場中固体電子の量子論

日時 2022年 7月 11日 【月】 午後3時10分 ・・・いつもと違う曜日と開始時間に注意

場所 16号館 827 室(対面)及びZoom (オンライン)

Zoom参加の方へ:

・物性セミナーMLに登録されている方は、セミナー案内メールでZoomアドレスを通知します。

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アブストラクト

磁場は物理学のみならず,自然科学において極めて基本的で重要な存在である.しかし身近な存在であるはずの磁場は,量子の世界では未だ解明されない多くの謎を生み出す源泉でもある.金属や半導体中の電子は,磁場によってエネルギーが量子化(ランダウ量子化)される.そのこと自体は古くから知られていたが,量子化の間隔や規則性は物質によって様々に異なり,それを正確に"量子力学の枠組みで"計算することは現代においても困難であった[1]. 近年,固体における相対論効果(スピン軌道結合)が,トポロジカル量子現象との関連性も含め,大いに注目を集めている.研究が進むにつれ,スピン軌道結合とランダウ量子化との関係性が従来理論では全く理解できない,という問題が顕在化してきた.この問題を解決するために,磁場中固体電子の量子化エネルギーを正確に計算する理論が求められていた [2]. 我々は,一見何の関係もないハイゼンベルクの「行列力学」が,ランダウ量子化の計算に転用できることを発見し,それを基に量子化エネルギーを厳密に計算出来る理論手法(π-matrix法)を開発することに成功した [3].この手法をディラック電子系の典型として知られるPbTeに適用し,これまでの常識的理解を覆す,スピン軌道結合とランダウ量子化の新しい関係性を見出した.この手法は密度汎関数法やLCAO法などバンド計算と組み合わせることが可能で,様々な物質に固有のランダウ量子化を計算できる.実験に先駆けて強磁場領域を理論的に探索することにより,磁場中固体電子の新しい量子現象を見出す一助になると期待している [4]. 本セミナーでは,集中講義の延長として,磁場中固体電子の量子論の基本的な内容から最近の研究までを紹介したい.

参考文献

[1] D. Shoenberg, in Magnetic Oscillation in Metals (Cambridge University Press, 1984).

[2] YF, Z. Zhu, B. Fauque, W. Kang, B. Lenoir, and K. Behnia, "Origin of the large anisotropic g-factor of holes in bismuth", Phys. Rev. Lett. 115, 216401 (2015)

[3] Y. Izaki and YF, "Nonperturbative matrix mechanics approach to spin-split Landau levels and the g-factor in spin-orbit coupled solids", Phys. Rev. Lett. 123, 156403 (2019)

[4] W. Kang, F. Spathelf, B. Fauque, YF, K. Behnia, Nat. Commun. 13, 189 (2022)

宣伝用ビラ

KMB20220711.pdf(40)

物性セミナーのページ

http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/KMBseminar/wiki.cgi/BusseiSeminar