<< | 2018-6 | >> | ||||
日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
1 | 2 | |||||
3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 |
17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 |
24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |
2018-6-28
2018年 夏学期 第5回 物性セミナー
講師 小宮山 進 氏(中国科学院上海技術物理研究所・テラヘルツ研究センター(NICT))
題目 物質中のナノスケール領域に生じる揺らぎを観察する顕微鏡
日時 2018年 6月 28日(木) 午後4時50分
場所 16号館 827
アブストラクト
全ての物質は正負の荷電粒子から構成されている。絶対零度でない限り、それらの荷電粒子は必ず揺らぎ運動をしている。つまり、あらゆる物質中にはどんな場合でも、必ず電荷・電流揺らぎが存在する。熱平衡条件下ならそれは熱揺らぎ(ナイキスト熱雑音)だし、非平衡条件下なら過剰揺らぎ(ショット雑音などの過剰雑音)である。物質中のナノ領域の揺らぎ(雑音)は、その場所で何が起こっているかについてのヒントを与える、基本的かつ重要な指標である。物質中の電荷・電流揺らぎを超高分解能かつ超高感度で観察する顕微鏡がもしあれば、便利で強力な測定手段になるだろう。しかし従来そんな顕微鏡は存在しなかった。しかし最近、新たな技術が開発されて挿引雑音顕微鏡(SNoiM)という装置が開発され、光明が見えてきた。そのことについて話す。物質内部の奥深くの揺らぎは検出が難しい。しかし、表面近傍の揺らぎは物質表面(< 30 nm)に電磁場揺らぎ(エバネセント波)を作るので、その揺らぎ電磁場(周波数15THzから30THz)を近接場光学技術と超高感度赤外/THz検出器を使って捉えることができる。講演では、この顕微鏡(SNoiM)の検出機構と、現在までに得られた以下3つの測定例について説明する。(i) 室温で熱平衡状態の金属中伝導電子の熱揺らぎに伴う揺らぎパターン, (ii)電流通電状態での金属細線中の局所的ジュール熱発生、(iii) 半導体微小素子(GaAs/AlGaAs nano constriction device)中の,常温駆動時のホット・エレクトロン分布の可視化。以上の測定結果に加えて、さらに、SNoiMの今後の発展可能性についても話したい。
宣伝用ビラ
KMB20180628.pdf(223)
物性セミナーのページ
http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/KMBseminar/wiki.cgi/BusseiSeminar
2018-6-19
2018年 夏学期 第4回 物性セミナー
講師 巻内崇彦 氏(慶応大理工,D3)
題目 原子1–2層のヘリウム薄膜の硬化と量子相転移
日時 2018年 6月 19日(金) 午後4時50分
場所 16号館 827
アブストラクト
低温の固体基板上に吸着したヘリウム4(4He)薄膜は超流動が始まる臨界吸着量(~2原子層)以下の吸着量では局在する.多孔質ガラスに吸着した4He薄膜では,基板の乱れに伴う化学ポテンシャルの乱雑さによりギャップレスなBoseグラスが実現すると予想されたが[1],実際にはギャップフルな状態であることが実験的に示された[2].局在状態がどのような相であるかは未解明であり,He薄膜における相関や乱雑さの重要性,また超流動への量子相転移を理解する上で重要な問題である.
本セミナーでは,我々の最近の実験結果について報告する[3]:我々はねじれ振り子を用いて薄膜の弾性を直接測定し,低吸着量の4He,3He,Ne薄膜が低温で異常硬化する現象を発見した. 4He,3Heでは同様のギャップフルな状態が実現しており,吸着量を増やすと臨界吸着量でギャップが消失する量子臨界現象を示すことがわかった.一方でNeではギャップの消失が起きず,古典的描像で説明できた.これらの結果はHe薄膜が強相関効果により局在するMott絶縁体やMottグラス[4]のような状態にあることを示唆する.
[1] M. P. A. Fisher, P. B. Weichman, G. Grinstein, D. S. Fisher, PRB 40, 546 (1989)
[2] P. A. Crowell, F. W. Van Keuls, J. D. Reppy, PRB 55, 12620 (1997)
[3] T. Makiuchi, M. Tagai, Y. Nago, D. Takahashi, K. Shirahama, in preparation
[4] T. Giamarchi, P. Le Doussal, E. Orignac, PRB 64, 245119 (2001)
宣伝用ビラ
KMB20180619.pdf(193)
物性セミナーのページ
http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/KMBseminar/wiki.cgi/BusseiSeminar
2018-6-12
2018年 夏学期 第3回 物性セミナー
講師 中村 壮伸氏(産業技術総合研究所)
題目 トポロジカルデータ解析の統計力学構築に向けて
日時 2018年 6月 12日(火) 午後4時50分
場所 16号館 827
アブストラクト
トポロジカルデータ解析、もしくはパーシステントホモロジーとよばれる数学が今世紀に誕生し、代数・幾何をはじめとして計算アルゴリズム開発・データサイエンスへの適用など基礎応用の両面にわたって学際的研究が活発に行われている[1]。この手法では点データに内在する穴を抽出し、"穴らしさ”の度合いを定量的に評価する事が可能である。我々はこの性質に注目して、分子動力学計算で得られる非晶質構造の特徴付けを試みた[2]。その結果、シリカガラスと金属ガラスという全く異なるタイプの構造に対して従来の構造記述法[3]を統一的に扱う事が可能である事、またシリカに関しては隠れた秩序構造を記述できる事がわかった。セミナーでは、パーシステントホモロジーの概説と我々の研究成果の紹介を行い、今後トポロジカルデータ解析に基づいた構造物性相関を与える理論を構築するための現在進行中の取り組みについて紹介する。
[1] H. Edelsbrunner and J. Harer, Computational Topology: An Introduction, (Amer. Math. Soc., 2010).
[2] T. Nakamura, Y. Hiraoka, A. Hirata, E. G. Escolar, and Y. Nishiura, Nanotechnology, (26), 304001 (2015), Y. Hiraoka, T. Nakamura, A. Hirata, E. G. Escolar, K. Matsue, and Y. Nishiura, PNAS, 113(26), 7035-7040 (2016)
[3] S. R. Elliott, Physics of Amorphous Materials (Longman. 1990), 2nd Ed.
宣伝用ビラ
KMB20180612.pdf(218)
物性セミナーのページ
http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/KMBseminar/wiki.cgi/BusseiSeminar