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物性セミナー/2017-6

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2017-6-30

2017年 夏学期 第4回 物性セミナー

講師 小林 美加 氏(東京大学生産技術研究所)

題目 分子性液体における液体・液体相転移

日時 2016年 6月 30日(金) 午後4時50分

場所 16号館 827

アブストラクト

液体の構造には秩序がないと考えると、液体状態は1種類しかないこととなるが、たとえば、水のアモルファス状態には、高密度アモルファス氷と低密度アモルファス氷といった、少なくとも2つ以上のアモルファス状態が発見されている。これは、液体状態にも構造という概念が必要であることを意味し、液体においても、2つの状態間を移り変わる相転移、すなわち、液体・液体転移が存在することを示唆する。分子性液体の亜リン酸トリフェニル(TPP:triphenyl phosphite)は、低温で一定温度に保持すると、密度の高い別のアモルファス状態に変化することが知られており、われわれはこの現象を、液体1から液体2への液体・液体転移であると考えてきた[1,2]。一方で、この新しい相はナノメートルオーダーの微結晶を含むため反論も多く、微結晶説や液晶説など諸説あり、長年議論されてきた。われわれは、従来より約4桁速い超高速冷却・昇温による熱測定を行うことで微結晶の生成を抑制し、これまで結晶化に阻まれて観測されてこなかった液体2から液体1への逆転移の観測に成功し、この現象が、2つの液体状態が共存し、互いに移り変わる1次相転移であることを証明した[3]。講演では、上記に加え、顕微鏡観察、光散乱、粘弾性測定などの実験結果を含め、われわれがこれまでに行ってきた液体・液体転移の研究について紹介する。

[1] H. Tanaka et al., Phys. Rev. Lett. 92, 025701 (2004).

[2] R. Shimizu, M. Kobayashi, H. Tanaka, Phys. Rev. Lett. 112, 125702 (2014).

[3] M. Kobayashi, and H. Tanaka, Nat. Commun. 7, 13438 (2016).

宣伝用ビラ

KMB20170630.pdf(203)

物性セミナーのページ

http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/KMBseminar/wiki.cgi/BusseiSeminar

2017-6-16

2017年 夏学期 第3回 物性セミナー

講師 横倉祐貴氏 ( 理化学研究所 )

題目 ネーター保存量としての熱力学エントロピー

日時 2017年 6月 16日(金) 午後4時50分

場所 16号館 827

アブストラクト

エントロピーはマクロとミクロの物理をつなぐ役割を担っている。しかし、その理解は平衡状態に限られており、系が時間発展する場合に対しては未だに明らかではない。だが、理解の進んでいる特別な時間発展が存在する。それは「断熱準静操作の下でエントロピーは保存する」という過程である。実際に、断熱定理がこの過程をミクロの力学から記述する。そこで、我々は古典粒子系を考え、ネーターの定理の枠組みにおいて、このエントロピーの保存則に対応する時間の特別な対称性を見出した[1]。注目すべきは、その対称性に量子力学が顔を覗かせることである。(実際、量子版も構成できる[2]。)こうして、熱力学と量子力学と時間の間にある不思議な関係が見えてくる。

[1] S. Sasa and Y. Yokokura, Phys. Rev. Lett. 116, 140601 (2016).

[2] S. Sasa, S. Sugiura and Y. Yokokura, arXiv:1611.07268.

宣伝用ビラ

KMB20170616.pdf(399)

物性セミナーのページ

http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/KMBseminar/wiki.cgi/BusseiSeminar

2017-6-2

2017年 夏学期 第2回 物性セミナー

講師 岡田崇氏 (理化学研究所)

題目 「化学反応ネットワークの摂動応答とトポロジー」

日時 2017年 6月 2日(金) 午後4時50分

場所 16号館 827

アブストラクト

生体内の化学反応系の特徴には、膨大な数の反応が連鎖的に起こるためにネットワークを形成していること、および、各反応は特定の酵素によって触媒されていることがある。酵素が系全体をどう制御しているかを明らかにするために、酵素の撹乱(knockdown)に対して種々の分子濃度の変化を測定する、という撹乱応答の実験が近年盛んになされている。しかしながら、ネットワーク構造の複雑さや反応速度関数の詳細がわかっていないという問題があるために、撹乱応答を理論的に説明する方法は未だ確立されていない。このような背景をふまえ、我々は、撹乱応答をネットワーク構造の情報のみから予測できる理論を定式化した。また、撹乱応答をネットワークのトポロジーと結びつける一般的な法則を証明した。本講演ではこれらの結果について紹介したい。

宣伝用ビラ

KMB20170602.pdf(272)

物性セミナーのページ

http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/KMBseminar/wiki.cgi/BusseiSeminar