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2020-11-30
2020年 冬学期 第3回 物性セミナー
講師 山本 浩史 氏(分子研・総合研究大学院大)
題目 薄膜デバイスを用いた有機強相関電子系の物性制御
日時 2020年 11月 30日【月】 午後4時50分 ・・いつもと違う曜日に注意
場所 Zoom開催
(一度登録された方、物性セミナーMLに登録されている方は、以下は必要ありません。)出席希望者は、予め登録をお願いします。登録フォーム https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdT67ZsTDiKsvutP59tY4tOUlx4WTInMKkTQIGWLqYCrPAQKA/viewformをご利用ください。メールにてこちらからZoomアドレスをお知らせします。
アブストラクト
有機半導体を用いたエレクトロニクスは、印刷可能でフレキシブルな電子回路を提供出来るという実用面が主に注目されているが、それのみならず、基礎的な物性物理の新しい舞台にもなりうる可能性を有している。とりわけ電界効果トランジスタ(FET)は物質のフェルミ準位を直接制御することができるため、物性科学における重要性は非常に高い。フェルミ準位を上下させることによって金属−絶縁体転移や超伝導転移など、種々の相転移を起こすことが出来れば、これまで明らかになっていなかった物質系の相図を解明することも可能であろう。また、このような相転移現象を逆にデバイス動作に利用できれば、将来的には効率的な電子制御が期待できる。
有機分子に整数比キャリアを注入することによって伝導性を付与した分子性導体では、しばしば電子の運動エネルギーと電子間クーロンエネルギーが拮抗する「強相関電子系」を発現する。強相関電子系は、モット絶縁体・電荷整列絶縁体・超伝導体を含めた多様な電子状態を示し、温度・圧力や電子密度(フェルミ準位)などの熱力学パラメーター制御によって電子系相転移を起こすことが知られている。本講演では、有機モット絶縁体を用いた電界効果トランジスタにおいて電場・歪み・光刺激などを用いた相転移挙動を実現することによって得られる物性物理の知見と、そのエレクトロニクスへの展開可能性について紹介する。[1-5]
[1] Phys. Rev. Lett. 103, 116801 (2009).
[2] Nat. Commun. 4, 2379 (2013).
[3] Science, 347, 743 (2015) .
[4] Nat. Commun. 7, 12356 (2016).
[5] Sci. Adv. 5, eaav7282 (2019).
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物性セミナーのページ
http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/KMBseminar/wiki.cgi/BusseiSeminar
2020-11-27
2020年 冬学期 第2回 物性セミナー
講師 足立 匡 氏(上智大理工)
題目 ミュオンスピン緩和で見る銅酸化物/鉄系超伝導体の スピンダイナミクス
日時 2020年 11月 27日(金) 午後4時50分
場所 Zoom 開催
(一度登録された方、物性セミナーMLに登録されている方は、以下は必要ありません。)出席希望者は、予め登録をお願いします。登録フォーム https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdT67ZsTDiKsvutP59tY4tOUlx4WTInMKkTQIGWLqYCrPAQKA/viewformをご利用ください。メールにてこちらからZoomアドレスをお知らせします。
アブストラクト
ミュオンは、物質中の微視的な磁性を調べられるだけでなく、イオンの拡散をプローブしたり、水素のシミュレーターとしても利用できることから、磁性材料、超伝導材料から電池材料、水素材料など幅広い分野で利用されている。本講演では、ミュオンスピン緩和(μSR)測定によって高温超伝導物質におけるスピンダイナミクスを調べた研究について紹介する。
電子ドープ型銅酸化物は、超伝導を阻害する過剰酸素の問題、母物質におけるノンドープ超伝導、超伝導が消失する超電子ドープ領域での強磁性など、様々な物理を有する。我々は、Cuスピン相関と超伝導の関連を明らかにするために、電子ドープ型の単結晶と薄膜を用いたμSRの測定を進めてきた。その結果、母物質を含む広い電子ドープ領域において、超伝導が発現する試料では低温でCuスピン相関が発達すること[1,2]などを明らかにしてきた。ホールドープ型銅酸化物とは異なる結果もあることから、超伝導の発現とCuスピン相関の関連を明らかにするための手がかりになり得る。
近年、鉄カルコゲナイドFeSeにおける超伝導、電子ネマティシティ、磁性の関連が注目を集めている。以前、鍋島らは、SeサイトにSを高濃度に置換し、電子ネマティシティが消失したFeSe1-xSxの薄膜において、電気抵抗率に異常なキンクが現れることを発見した[3]。μSR測定を行った結果、抵抗率にキンクが現れる温度付近で初期アシンメトリの急激な現象が観測された。このことから、Sを高濃度に置換したFeSe1-xSxの薄膜では磁気秩序が形成されることが明らかになった。最後に、表面や界面の磁性を調べることが可能な超低速ミュオンビームを用いた今後の展望についても触れたい。
[1] T. Adachi et al., Condens. Matter 2, 23 (2017).
[2] M. A. Baqiya et al., Phys. Rev. B 100, 064514 (2019).
[3] F. Nabeshima et al., J. Phys. Soc. Jpn. 87, 073704 (2018).
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2020-11-20
2020年 冬学期 第1回 物性セミナー
講師 平井 大悟郎 氏(東京大学物性研)
題目 5d遷移金属化合物の示す多彩な量子物性:多極子、多色性、フラストレート磁性
日時 2020年 11月 20日(金) 午後4時50分
場所 Zoom 開催
出席希望者は、予め登録をお願いします。登録フォーム https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdT67ZsTDiKsvutP59tY4tOUlx4WTInMKkTQIGWLqYCrPAQKA/viewformをご利用ください。(一度登録された方、物性セミナーMLに登録されている方は必要ありません。)メールにてこちらからZoomアドレスをお知らせします。
アブストラクト
5d遷移金属化合物は、白金や金など周期表の第6周期にある遷移元素(5d元素)を含む物質群です。電子相関により高温超伝導や巨大磁気抵抗などが発現し、強相関電子物性研究の中心的舞台である3d遷移金属化合物に対して、5d電子は軌道の広がりが大きく電子相関が弱いため、5d化合物はこれまであまり注目されてきませんでした。しかし、イリジウム酸化物において、スピン軌道相互作用に誘起されたMott絶縁体状態が発見されて[1]以降、5d化合物のユニークな物性に対する研究が盛んになってきています。5d化合物では、結晶場、電子相関、スピン軌道相互作用が同じようなエネルギースケールで拮抗し、それらが競合または協奏することで、他の電子系には見られない多彩な物性を示します[2]。本セミナーでは、結晶場、電子相関、スピン軌道相互作用の微妙なバランスによって現れる5d電子系にユニークな物性として1.Ba2MgReO6における多極子の秩序[3] 2.Ca2ReO5Cl2の多色性[4] 3.フラストレーションによる次元性の低下を示すA2ReO5X2[5]という3つの研究を紹介します。
[1] B. J. Kim et al., Phys. Rev. Lett. 101, 076402 (2008), B. J. Kim et al., Science 323, 1329 (2009).
[2] W. Witczak-Krempa et al., Annu. Rev. Condens. Matter Phys. 5 57–82 (2014).
[3] D. Hirai et al., Phys. Rev. Research 2, 022063(R) (2020).
[4] D. Hirai et al., J. Am. Chem. Soc. 139, 10784 (2017).
[5] D. Hirai et al., J. Phys. Soc. Jpn. 88, 044708 (2019).
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