<< | 2019-11 | >> | ||||
日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
1 | 2 | |||||
3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 |
17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 |
24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |
2019-11-29
2019年 冬学期 第3回 物性セミナー
講師 大熊 哲 氏(東工大 理学院 物理学系)
題目 超伝導渦糸系における新規非平衡相転移と量子臨界現象
日時 2019年 11月 29日(金) 午後4時50分
場所 16号館 827
アブストラクト
第2種超伝導体の渦糸は, (I) 混合状態の超伝導特性を支配すると共に, (II) 電流駆動により, ランダム基板上を運動する多粒子系とみなすことができる。我々は“普遍的な物理現象解明のためのモデル実験系” [1]として渦糸系を利用するという視点に立った研究を展開している。これまでに厚いアモルファス膜において, 渦糸固体の量子融解[2], 異方格子の熱融解[3], 速度増大に伴う格子方位の回転[4]などの新規現象を見出した。一方, 2次元超薄膜では, クーパー対が局在したBose-Glass絶縁体相を含む, 超伝導絶縁体転移の磁場と乱れに関する絶対零度の渦糸相図を作成した。ところが近年, 結晶性のいい極薄膜において, ピン止めの弱いアモルファスMoxGe1-x薄膜の低温域で見られたような広い磁場中金属相が高温から観測され, 量子渦糸液体を仮定した新奇相図が提案されている[5]。しかし測定は抵抗のみで, 渦糸状態の直接的実験検証はされていない。そこで我々は, アモルファスMoxGe1-x薄膜に対して0.1 Kの極低温域迄のネルンスト測定を初めて試み, 位相ゆらぎに相当する渦糸液体と振幅ゆらぎに相当する超伝導ゆらぎの領域を広い温度-磁場域で決定した。
一方 (II)については, ピン止めが効いた低速域の駆動実験を行い, 交流による可逆不可逆転移(RIT) [6]をコロイド系[7]に次いで見出しRITの普遍性を示し, また直流によるDepinning転移[6,8]とClogging転移を初めて実証した。これら3つの非平衡相転移は,吸収状態転移の2次元Directed Percolation普遍クラスに属する可能性を指摘した[6,9]。さらに, これらの相転移の素過程ともいえる, 運動による秩序化[10]と無秩序化の解明に向けた研究も進め, 直流による無秩序化過程では系は常に一様だが, 交流による動的秩序化過程では秩序・無秩序領域が2相分離するという新奇現象を見出した[11]。また, 交流による動的秩序化と直流による動的無秩序化の競合現象も観測した[12]。一方, 交流でも非平衡Depinning転移が起こることを見出し, その臨界現象は直流の場合と一致することを示した[13]。RITのこれまでの実験はすべて人工的な巨視的せん断力がかかる回転系で行われた[6,7]が, 自然界でより普遍的に見られるランダムなピンに起因する局所的せん断力でも, 同様のRITが起こることを明らかにした[14]。講演ではこれらの非平衡現象の普遍性や他の系への波及性[14]についても紹介する。
[1] A. Maeda et al., Phys. Rev. Lett. 94 (2005) 077001.
[2] S. Okuma et al., Phys. Rev. Lett. 86 (2001) 3136: 91 (2003) 067001: Phys. Rev. B 83 (2011) 064520.
[3] A. Ochi et al., J. Phys. Soc. Jpn. 85 (2016) 034712.
[4] S. Okuma, D. Shimamoto, N. Kokubo, Phys. Rev. B 85 (2012) 064508.
[5] Y. Saito, T. Nojima, Y. Iwasa, Nat. Commun. 9 (2018) 778.
[6] S. Okuma, Y. Tsugawa, A. Motohashi, Phys. Rev. B 83 (2011) 012503.
[7] L. Corte et al., Nat. Phys. 4 (2008) 420: D.J. Pine et al., Nature 438 (2005) 997.
[8] S. Okuma, A. Motohashi, New J. Phys. 14 (2012) 123021: 大熊哲, 固体物理51 (2016) 547.
[9] C. Reichhardt et al., Phys. Rev. Lett 103 (2009) 168301: Rep. Prog. Phys. 80 (2017) 026501.
[10] Y. Togawa, R. Abiru K. Iwaya H. Kitano, A. Maeda, Phys. Rev. Lett. 85 (2000) 3716.
[11] M. Dobroka, Y. Kawamura, K. Ienaga, S. Kaneko, S. Okuma, New J. Phys. 19 (2017) 053023.
[12] M. Dobroka, K. Ienaga, Y. Kawamura, S. Kaneko, S. Okuma, New J. Phys. 21 (2019) 043007.
[13] Y. Kawamura, S. Moriya, K. Ienaga, S. Kaneko, S. Okuma, New J. Phys. 19 (2017) 093001.
[14] S. Maegochi, K. Ienaga, S. Kaneko, S. Okuma, Sci. Rep. 9 (2019) 16447.
宣伝用ビラ
KMB20191129.pdf(170)
物性セミナーのページ
http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/KMBseminar/wiki.cgi/BusseiSeminar
2019-11-8
2019年 冬学期 第2回 物性セミナー
講師 黒子めぐみ 氏(NTT基礎研究所 山口グループ)
題目 微細な機械構造素子における弾性波ダイナミクス
日時 2019年 11月 8日(金) 午後4時50分
場所 16号館 827
アブストラクト
半導体微細加工技術の向上により、微細な機械素子の作製が可能となり、超高感度センサーへの応用、バイオセンサーへの応用、フォノンの量子性の観測に向けてなど、多岐にわたる研究が盛んにおこなわれている[1]。これまでは、センサー感度の向上に直結する機械振動を閉じ込める共振器の研究が中心となってきた。近年、フォノンの量子ネットワーク形成やフォトンーフォノンハイブリッド回路の実現に向けて、個々の共振器を結ぶ弾性波/フォノン導波路や、これらの技術を集積させるオンチップフォノン回路の研究が注目を集めている[2]。
本セミナーでは、まず研究分野の現状を概観したのち、半導体微細加工によるデバイス作製についてわかりやすく説明する。その後、フォノニック結晶導波路の分散効果を利用した弾性波パルス制御、導波路の非線形効果による非線形ダイナミクスの観測など、我々が取り組んでいる最新の研究を紹介する予定である[3,4]。
[1] A. H. Ghadimi et al., Science 360 764 (2018), S. Dominguez-Medina et al., Science 362 918 (2018), A. D. O’Connell et al., Nature 464 697 (2010).
[2] W. Fu et al., Nat. Comm. 10 2743 (2019).
[3] M. Kurosu et al., Nat. Comm. 9 1331 (2018).
[4] M. Kurosu et al., arXiv:1903.08339.
宣伝用ビラ
KMB20191108.pdf(137)
物性セミナーのページ
http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/KMBseminar/wiki.cgi/BusseiSeminar
2019-11-1
2019年 冬学期 第1回 物性セミナー
講師 横井 直人 氏(東大工・物工)
題目 ホログラフィック双対性から見る磁性体中の磁化ダイナミクス
日時 2019年 11月 1日(金) 午後4時50分
場所 16号館 827
アブストラクト
ホログラフィック双対性とは,d次元空間上で定義された量子多体系と(d+1)次元空間上で定義された古典重力理論(及びそれに結合した物質場の理論)との双対性である.我々は, このホログラフィック双対性をスピントロニクス分野の研究における新しい指導原理として応用することを目指し,3次元強磁性体にホログラフィック双対な(4+1)次元時空上の重力理論を構成し,磁化やスピン流などの強磁性体中の物理量と双対な重力理論のスカラー場やヤン・ミルズ場の間の対応を表す「ホログラフィック辞書」を見出した.本講演では,まず最初に,重力理論の住む高次元空間にブラックホールを導入することにより,磁化や帯磁率などの温度依存性を双対重力理論において計算し,得られた強磁性相転移や低温での温度依存性などについて議論を行う.次に,上記の静的な熱力学量の解析を一般化し,双対重力理論を用いて,強磁性体中の磁化やスピン流のダイナミクスについて解析する.具体的には,双対重力理論におけるスカラー場とヤン・ミルズ場の揺らぎに対する運動方程式から強磁性体中の磁化の運動方程式を導出し,そこから導かれるスピン波ダイナミクスの温度依存性などについて議論する.
宣伝用ビラ
KMB20191101.pdf(127)
物性セミナーのページ
http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/KMBseminar/wiki.cgi/BusseiSeminar