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2018-11-30
2018年 冬学期 第3回 物性セミナー
講師 下出 敦夫 氏(理化学研究所 創発物性科学研究センター)
題目 結晶における磁気四極子と(重力)電気磁気効果
日時 2018年 11月 30日(金) 午後4時50分
場所 16号館 827
アブストラクト
多極子は電荷・電流密度の異方性を特徴づける,もともとは19世紀に確立した物質中の電磁気学における概念である.我々の多くにとって「物質」とは単位構造が周期的に並んだ結晶であり,その性質の多くは量子力学に従う電子によって決まる.多極子は電荷・電流密度に位置をかけて積分することで定義されたが,実際にはこれらの「物質」ではよく定義されておらず,定義そのものを再考する必要がある.この問題は1990年代から認識されており,最低次である電気 [1]・軌道磁気双極子 [2]については既に確立し,「現代的な理論」と呼ばれている.
本講演では,まず物質中の電磁気学と「現代的な理論」を紹介した後,それを拡張した軌道 [3]・スピン磁気四極子 [4]の定式化について述べる.これらの例から,多極子は単なる定義の問題ではなく,(a) Hall効果や電気磁気効果などの交差相関応答の微視的な起源(b) 温度勾配に対する応答のKubo公式の発散を打ち消す補正という重要な役割を果たすことを示す.
[1] R. D. King-Smith and D. Vanderbilt, Phys. Rev. B 47, 1651 (1993).
[2] J. Shi et al., Phys. Rev. Lett. 99, 197202 (2007).
[3] A. Shitade et al., Phys. Rev. B 98, 020407 (2018); Y. Gao and D. Xiao, Phys. Rev. B 98, 060402 (2018).
[4] C. D. Batista et al., Phys. Rev. Lett. 101, 077203 (2008); Y. Gao et al. Phys. Rev. B 97, 134423 (2018); A. Shitade et al., arXiv:1811.05596.
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2018-11-16
2018年 冬学期 第2回 物性セミナー
講師 楠瀬博明氏 ( 明治大学理工学部 )
題目 拡張多極子による多様な交差相関現象
日時 2018年 11月 16日(金) 午後4時50分
場所 16号館 119号室 【いつもと違う部屋に注意!】
アブストラクト
電子の電荷・スピン・軌道が絡み合った局所的な自由度は、微視的な多極子として統一的に記述できる。これまでの研究では、主に単一原子内 の単一軌道からなるヒルベルト空間内で定義される多極子自由度に焦点が当てられていた[1]。このような制限されたヒルベルト空間では、空間反転に対して偶パリティの電気および磁気多極子のみが活性である。
多極子を考えるヒルベルト空間を、複数原子サイト(クラスター)もしくは複数軌道(ハイブリッド)に拡げると、空間反転および時間反転の偶奇性が異なる4種の多極子自由度がすべて活性となる[2,3]。電気磁気効果に代表される多様な交差相関現象は、電場により磁化を誘起するといった空間反転や時間反転の異なる物理量を結びつける現象である。その背景には空間反転または時間反転を破る結晶構造や外場、分子場が必要であり、これらを産み出す微視的な自由度は、上記の 4種の多極子自由度によって尽くされる。
本講演では、多極子自由度の一般化によって活性化する4種類の多極子について触れた後、そのような拡張された多極子の秩序が引き起こす、交差相関現象をいくつかの例を交えて紹介する[3,4]。
[1] Y. Kuramoto, H. Kusunose, and A. Kiss, J. Phys. Soc. Jpn. 78, 072001 (2009), and references therein.
[2] S. Hayami and H. Kusunose, J. Phys. Soc. Jpn. 87, 033709 (2018).
[3] S. Hayami, M. Yatsushiro, Y. Yanagi, and H. Kusunose, Phys. Rev. B 98, 165110 (2018), and references therein.
[4] S. Hayami, H. Kusunose, and Y. Motome, J. Phys.: Condens. Matter 28, 395601 (2016), and references therein.
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2018-11-2
2018年 冬学期 第1回 物性セミナー
講師 大槻東巳氏 ( 上智大学理工学部 )
題目 畳み込みニューラルネットワークで求めたランダム電子系の量子相転移の相図
日時 2018年 11月 2日(金) 午後4時50分
場所 16号館 827
アブストラクト
身近で人工知能という言葉を聞く機会が増えている。最近のコンピュータの進歩,特に GPUの向上により,こうした手法が小規模な研究をしている物性物理学者でも簡単に使えるようになった。そのため,物性物理の研究に機械学習,特にニューラルネットワークを利用する動きが最近注目されている。
この講演では情報科学の専門知識のない物性物理学者にも使えるようになった多層畳み込みニューラルネットワーク,いわゆる深層学習による画像処理を利用して,ランダム電子系の相図を導出するという試みを紹介する。特にバンド絶縁体,トポロジカル絶縁体,アンダーソン絶縁体など様々な絶縁体相の示す波動関数を画像としてニューラルネットワークに学ばせると,ニューラルネットワークは汎化能力を示し,今まで学習していなかったパラメータ領域がどの相なのかを判定できることを示す。金属・絶縁体の相図を示しこの方法の有効性を示したのち,並進対称性がランダムポテンシャルによって壊されたトポロジカル系の相図を議論する。トポロジカル系は,たとえ乱れていても特異な表面状態を示すことを利用し,トポロジカル絶縁体,トポロジカル超伝導体,ワイル半金属の相図を導出する ( ニューラルネットワークに導出してもらう ) 試みを紹介する。また,実空間の波動関数を使った解析と, k- 空間の波動関数を使った解析を比較し,双方の長所,短所について述べる。
[1]T. Ohtsuki, T. Ohtsuki: J. Phys. Soc. Jpn., 85, 123706 (2016), 86, 044708 (2017).
[2]T. Mano and T. Ohtsuki: J. Phys. Soc. Jpn., 86, 113704 (2017).
[3]大槻東巳:パリティ 32, 52-56 (2017), 33, 6 (2018).
[4]大槻東巳,真野智裕:固体物理 53, 447 (2018).
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