トップ 一覧 検索 ヘルプ RSS ログイン

物性セミナー/2022-1

<< 2022-1 >>
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31

2022-1-28

2021年 冬学期 第11回 物性セミナー

講師 桑原 知剛 氏(理研革新知能統合研究センター)

題目 ハミルトニアン学習のサンプル複雑性

日時 2022年 1月 28日(金) 午後4時50分

場所 Zoom によるオンライン開催

・物性セミナーMLに登録されている方は、セミナー案内メールでZoomアドレスを通知します。

・登録のない方は、以下で予め登録をお願いします。(自動的に物性セミナーMLへ登録されます。)登録フォーム https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdT67ZsTDiKsvutP59tY4tOUlx4WTInMKkTQIGWLqYCrPAQKA/viewformをご利用ください。

アブストラクト

量子力学に従って相互作用する粒子系(量子多体系)の性質は、系のハミルトニアンによって完全に決定される。近年の実験的技術の発達に伴い、量子系のミクロな構造を観測することが可能になってきた。このような背景から量子系のハミルトニアンを観測データのみから推定する問題が、物質科学・量子機械学習・量子情報理論などの分野で理論と実験の両側面で大きな注目を浴びている。一方で、現状提案されているハミルトニアン学習のアルゴリズムはヒューリスティックなものがほとんどであり、精度保証は通常非常に困難な問題であった。本研究ではサンプル複雑性、すなわち「ハミルトニアンをある精度以上で学習するために十分なデータ数の数」、を解析した。より具体的には、ハミルトニアンと逆温度βの量子ギブス分布をを考える このとき、量子状態をN回測定してデータを得たときに、そのデータからどの程度良い精度でハミルトニアンが推定できるかが問題となる。この問題については、古典系においては近年の研究で定性的なレベルで解決が得られている一方で、量子系ではギブス状態自体の推定に関しては様々な先行研究がある一方で、ハミルトニアンのサンプル複雑性は未解決であった。我々は、ハミルトニアン学習のサンプル複雑性問題を解決し、精度εの推定を達成するためのサンプル数に関して、十分条件と必要条件を明らかにして、定性的にPoly(n) (n: システムサイズ)のサンプル複雑性が最適であることを示した。本講演ではより詳細な研究背景や、サンプル複雑性を得る上で鍵となる性質(強い凸性)について説明する。

文献

[1] A. Anshu S. Arunachalam T. Kuwahara and M. Soleimanifar Nature Physics 17 931–935 (2021)

[2] V. Dunjko Nature Physics 17 880–881 (2021)

宣伝用ビラ

KMB20220128.pdf(61)

物性セミナーのページ

http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/KMBseminar/wiki.cgi/BusseiSeminar

2022-1-27

2022年 冬学期 第10回 物性セミナー

講師 小松崎 民樹 氏(北大電子科学研)

題目  強化学習を用いたラマン計測迅速化:On-the-fly Raman image Microscopy

日時  2022年 1月 27日【木】 午後4時50分・・・いつもと違う曜日に注意

場所 16-109で対面(コロナ対策のため学内者のみとします)及びZoom によるオンライン中継

・物性セミナーMLに登録されている方は、セミナー案内メールでZoomアドレスを通知します。

・登録のない方は、以下で予め登録をお願いします。(自動的に物性セミナーMLへ登録されます。)登録フォーム https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdT67ZsTDiKsvutP59tY4tOUlx4WTInMKkTQIGWLqYCrPAQKA/viewformをご利用ください。

アブストラクト

我々は、近年、on the flyで計測に沿ってそこまでに入手したラマンデータを解析し、その解析結果に基づいて最適照射パターンを同定し、計測系へフィードバックすることにより、ラマン診断を迅速化する計測インフォマティクスアルゴリズムとそのプロトタイプのラマン装置を開発した。講演では、甲状腺濾胞癌細胞株、甲状腺濾胞上皮細胞株の診断を例にその概要を説明する。

宣伝用ビラ

KMB20220127.pdf(30)

物性セミナーのページ

http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/KMBseminar/wiki.cgi/BusseiSeminar

2022-1-21

2021年 冬学期 第9回 物性セミナー

講師 岸根 順一郎 氏 (放送大学)

題目 フォノンの角運動量とカイラリティ

日時 2022年 1月 21日(金) 午後4時50分

場所 Zoom によるオンライン開催

・物性セミナーMLに登録されている方は、セミナー案内メールでZoomアドレスを通知します。

・登録のない方は、以下で予め登録をお願いします。(自動的に物性セミナーMLへ登録されます。)登録フォーム https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdT67ZsTDiKsvutP59tY4tOUlx4WTInMKkTQIGWLqYCrPAQKA/viewformをご利用ください。

アブストラクト

フォノンが,ベクトル場として軌道角運動量と内在的("スピン")角運動量を運ぶことは古くから指摘されている(例えば文献[1]).しかしフォトンの場合と同様,軌道とスピンの分離問題はなかなか微妙である.さらにどのような物理量を通してフォノン角運動量が測定されるのかが,本格的に議論され始めたのは最近の話である.今回は,歴史的経緯を踏まえてフォノンの角運動量(特にスピン部分)の捉え方についてお話しする.そしてフォノンの内在的角運動量が,カイラル結晶における分散を通して実測可能であることを述べる.ここで,そもそも弾性波にカイラリティの効果を入れるには通常の弾性論では間に合わず,ミクロポーラー弾性論と呼ばれる枠組みを用いる必要があることを強調する[2].次に,長波長フォノン(弾性論)と短波長フォノン(空間群の表現論)の関係性に触れる.最後に,円偏光ラマン分光によるフォノン角運動量検出について,最近の成果を紹介する[3]. 余裕があれば,カイラリティ誘導スピン偏極(CISS)と呼ばれる現象をスピンと分子振動(いわばフォノンの素過程)との結合の観点から考察した理論[4]にも触れたい.

[1] S. V. Vonsovskii and M. S. Svirskii, Phonon Spin, Sov. Phys. Solid State 3, 1568 (1962)

[2] J. Kishine, Ovchinnikov and Tereshchenko, Chirality-Induced Phonon Dispersion in a Noncentrosymmetric Micropolar Crystal, PRL125, 245302 (2020)

[3] K. Ishito, H. Mao, Y. Kousaka, Y. Togawa, S. Iwasaki, T. Zhang, S. Murakami, J. Kishine, and T. Satoh, Truly chiral phonons in α-HgS observed by circularly polarised Raman spectroscopy, arXiv:2110.11604

[4] A. Kato, H. Yamamoto, and J. Kishine, Chirality-Induced Spin Filtering in Pseudo Jahn-Teller Molecules, arXiv:2111.12917.

宣伝用ビラ

KMB20220121.pdf(78)

物性セミナーのページ

http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/KMBseminar/wiki.cgi/BusseiSeminar

2022-1-14

2021年 冬学期 第8回 物性セミナー

講師 作道 直幸 氏 (東京大学工学系研究科)

題目 高分子ゲルの熱力学: 準希薄スケーリング原理と負のエネルギー弾性

日時 2022年 1月 14日(金) 午後4時50分

場所 Zoom によるオンライン開催

・物性セミナーMLに登録されている方は、セミナー案内メールでZoomアドレスを通知します。

・登録のない方は、以下で予め登録をお願いします。(自動的に物性セミナーMLへ登録されます。)登録フォーム https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdT67ZsTDiKsvutP59tY4tOUlx4WTInMKkTQIGWLqYCrPAQKA/viewformをご利用ください。

アブストラクト

高分子ゲルは、架橋された高分子鎖の網目が大量の水を保持した固形のソフトマターであり、ゼリー・豆腐などの食品や、ソフトコンタクトレンズ・止血剤など医療に活用される。高分子ゲルの物性を理解することは、産業的な材料開発への需要もあるが、その平衡熱力学すら十分に理解されていない。その理由は、通常のゲルは制御できない不均一な高分子網目構造を持つために実験の再現性が低く、その不均一性の影響を評価することも困難なためである。我々は、極めて均一で制御可能な網目構造を持つ高分子ゲル(テトラゲル)を用いることで、この不均一性の問題を克服し、高分子ゲルの熱力学の構築に取り組んでいる。本講演では、高分子ゲルの熱力学において最も基本的な弾性率と浸透圧に関する我々の研究を紹介する。弾性率に関しては、熱力学第二法則に由来する「エントロピー弾性」が支配的であると長年信じられてきたが、エントロピー弾性に加えて、内部エネルギー変化由来の「負のエネルギー弾性」を持ち、その合計で弾性が決まることがわかった [1,2]。浸透圧に関しては、液体状のゾル状態から固体状のゲル状態までの、ゲル化(固化)の進行に伴う浸透圧の低下は、高分子溶液で知られる普遍的状態方程式で決まることがわかった [3]。最近、この発見に基づき、ゲルの浸透圧の本質は「準希薄スケーリング則」だと考え、これを原理として認めると、ゲルの平衡膨潤率が従来の標準的な平均場理論(Flory-Huggins 理論)よりも正確に予測できるだけでなく、自己回避ウォークの臨界指数が実験的に決定できることがわかった。また、deGennes の c*定理の主張を実験的に明確に否定し、実験と整合的な新しいスケーリング則が導出される。最後に、非平衡におけるゲルの普遍法則についても紹介する [4]。

[1] T. Yoshikawa, N. Sakumichi, U. Chung, T. Sakai, Phys. Rev. X 11, 011045 (2021).

[2] N. Sakumichi, Y. Yoshikawa, T. Sakai, Polymer J. 53, 1293 (2021).

[3] T. Yasuda, N. Sakumichi, U. Chung, T. Sakai, Phys. Rev. Lett. 125, 267801 (2020).

[4] T. Fujiyabu et al., Phys. Rev. Lett. 127, 237801 (2021).

宣伝用ビラ

KMB20220114.pdf(82)

物性セミナーのページ

http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/KMBseminar/wiki.cgi/BusseiSeminar

2022-1-13

2022年 冬学期 第7回 物性セミナー

講師 山本倫久 氏 (理研 量子電子デバイス研究チーム)

題目 電子干渉計で見る近藤遮蔽雲

日時 2022年 1月 13日【木】 午後4時50分・・いつもと違う曜日に御注意

場所 Zoom によるオンライン開催

・物性セミナーMLに登録されている方は、セミナー案内メールでZoomアドレスを通知します。

・登録のない方は、以下で予め登録をお願いします。(自動的に物性セミナーMLへ登録されます。)登録フォーム https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdT67ZsTDiKsvutP59tY4tOUlx4WTInMKkTQIGWLqYCrPAQKA/viewformをご利用ください。

アブストラクト

近藤効果は、磁性不純物を含む金属の電気抵抗が低温で増大する現象として知られている。近藤効果の基底状態は、局在磁気モーメントと伝導電子との間の多体のスピン一重項状態である。局在磁気モーメントを遮蔽する伝導電子が磁性不純物の周りに雲のように広がり、フェルミ面近傍の量子物体を形成する。このことから、近藤状態は「近藤(遮蔽)雲」とも呼ばれる。近藤雲の大きさは、有限サイズの電子系や複数の磁性不純物が存在する物質の状態を決定する重要なパラメータであり、近藤効果のスケーリングエネルギーである近藤温度に対応する時間にフェルミ速度をかけた値で与えられる。近藤効果の発見以降、多くの物理学者が、近藤雲の大きさや形状を実験的に検出して制御することを目標とした研究に取り組んできた。しかし、近藤雲の広がりが正確に測定されたことはなかった。本講演では、電子干渉計を用いた近藤遮蔽雲の観測実験を紹介する。半導体人工原子中の局在スピンを遮蔽する近藤雲を大きさ可変の電子波干渉計に埋め込んだ実験系で、近藤雲の大きさに加え、その普遍的な形状が得られた。半導体の人工原子を用いて形成される近藤雲の広がりは、数マイクロメートルに及ぶ。これは、半導体量子デバイス素子の一般的なサイズを大きく上回る値である。このスピンの量子力学的な結合状態を介して、隣接せずに離れて配置された局在スピンを互いに結合させることが可能になると考えられる。

宣伝用ビラ

KMB20220113.pdf(24)

物性セミナーのページ

http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/KMBseminar/wiki.cgi/BusseiSeminar