持続可能な社会の実現を目指すうえで修復性材料の開発は重要な課題である。これまでゴムやゲルなどの柔らかい修復材料は数多く報告されてきたが、高い機械的強度と修復能力は互いに相反する性質であり、２つの特徴を両立させることは困難と考えられてきた。例えば、非結晶性の高分子量ポリマーは一般に機械的強度に優れるが、加熱溶融無しでは修復しない。 これはポリマー鎖の絡み合いにより、その拡散が著しく遅いためである。 今回我々は高密度の水素結合によって架橋された低分子量ポリマーは、優れた機械的強度を持ちながら室温で圧縮すると迅速に修復することを見出した。詳細な検討の結果、（１）水素結合ユニットとして結晶化を誘発しないチオ尿素を用いたこと、（２）水素結合ペアの交換を容易にする機構を有することにより、この稀有な性質が実現できることを明らかにした。