正反対の性質を有する電子供与体と電子受容体は、互いに引き合い、混ざりやすい性質のために、分離(ナノ相分離)と接合(ヘテロ接合)の実現は一般に容易でないと考えられていました。一方我々は、電子供与体からなる分子層を、電子受容体からなる分子層で包んだ中空の同軸構造で、かつ広い接触面積をもつことを可能とした同軸ケーブルの開発に成功しました。この構造体は、電子を与える部分(ヘキサベンゾコロネン)と電子を受け取る部分(トリニトロフルオレノン)が連結した分子が、ある溶剤条件下で自然に積層する現象を利用することにより形成します。この現象を利用したことにより、電子供与体と電子受容体が混ざること無く、ナノ相分離構造とヘテロ接合構造を併せ持つ材料を作り出しました。この同軸ナノケーブルに光をあてると10000倍にもおよぶ電流値の大きな変化の誘起が実証されました。本研究は、高効率な光−電気変換デバイスの開発に向けて重要な設計指針を与えるものです。
電子供与性/電子受容性分子層のヘテロ接合でできた光伝導性同軸ナノチューブ